フランケンシュタイン シェリー

批評理論入門に入る前に、この本で題材とされているフランケンシュタインの小説を読んだ。正直なところ期待以上に面白く、そして読みやすい物語であった。むろんフランケンシュタインの名を聞いたときには小説よりは映画のイメージのほうが強く喚起されるであろうが、映画に劣らず素晴らしい小説であることをここに述べておく。多くの人が小説版を読んでいないだろうが、ぜひとも未読者におすすめしたい小説の一つであった。さて、この衝撃的な内容の物語が、どのように読み解かれていくのか。まさにこの答えは次の本批評理論入門で明らかにされるだろう。題材となる本を読んだことで、次の本がこんなにも待ち遠しくなるものだとは思わなかった。早く読み解いていきたいと思うのだが、はやる気持ちを抑えてフランケンシュタインを読む中で気になった点や疑問に思った点、此処が素晴らしいと思った点を少しばかりあげておこうかと思う。まずフランケンシュタインと怪物に大きな焦点が当てられていることは間違いがない。書簡体小説という形式も読者を物語に引き込ませる技法として役立っている。事実ゆっくり読んだつもりでも読了までに一日と掛からなかった。そして十分すぎるほどの欧州の風景描写についての問題もある。確かに美しい自然の描写が物語の中での役割を持っていたのだが、幾分冗長と思える部分もいくつかありもう少し改善することが出来たのではないかという思いにとらわれる。また、それらの描写が詩的な部分を含むことが多かった。さらに主要な人物二人の細かな心情描写と物語自体の流れについては多くの議論をさく必要があるだろう。フランケンシュタインと怪物の対比の考察から多くのことが分かるかもしれない。それにしても本当に面白い小説であった。人生で読める本の数など高が知れている。だからこそ素晴らしい作品に出会えた時の喜びは何物にも代えがたい。これからも傑作と呼ばれる本たちに巡り合っていきたいものだ。