No.16 アメリカン・スナイパー クリント・イーストウッド

気になった点が4点あったのでメモしておく。聖書・子供の殺害シーン・砂嵐を用いた戦闘シーン・映画のラスト(スタッフロール含む)である。物語の流れは普通の映画の流れであって、別段新しいことは無かったが、これが史実に基づいていることに注意。つまり単純なフィクションでもノンフィクションでもない。

聖書については、物語の冒頭で教会から手に入れそれから最後の戦闘シーンで落とすまでクリスはずっと持っていた。聖書が何かのメタファーなのか。冒頭での人間には三種類しかいないという話や、聖書を落としてアメリカに帰ってきてから心に傷を負った姿が描かれていることがヒントとなる。はたしてクリスは神を信じていたのだろうか。物語の中盤でクリスが仲間に胸ポケットの聖書は弾除けなのかと尋ねられる。それは同僚がクリスが聖書を開いている所を見たことがなかったからである。

子供の殺害シーンは衝撃だった。他の映画ではなかなか見ることは無いように思われる。電気ドリルで子供の足や頭をえぐる所などはある意味で心に残る場面であった。また、砂嵐で視界が悪くなるのは今までの夜の闇で視界が悪くなることの代わりになる手法ではなかろうか。ただし使いどころは難しいかもしれない。

映画のラストは実際の映像を織り交ぜてあって、これが史実に基づくことを強く意識させられた。しかしなぜクリスが殺されたのかの説明もなく単純なドキュメンタリーではなさそうだ。それからスタッフロールに音楽がついていない映画は初めて見たかもしれない。以上を鑑みるに従来の丁寧な物語展開に新しい手法をちりばめた作品といえるだろう。

今回はDolby-atomsで見たのだが、総合的に見てあまり従来のシアターと変わりがないように思えた。最初は戦車の音が非常に空間的に大迫力で聞こえたが、だんだんと慣れてしまったからなのか、それとも銃撃戦の音で耳が麻痺してしまったのか分からないものの、最後には先にも述べたように何か特別なものがあると強く言えない状態になってしまった。もしかしたら、もっと純粋な音楽系の映画ならばもっと効果的に音響が楽しめるのではないか。予告編であったセッションなどはそのよい例となるかもしれない。機会があればぜひとも見に行きたいものである。

追記 最後の戦闘で相手の狙撃兵を打ち殺すところのスローモーションや大げさな音楽は使い古されているように感じて、逆に陳腐なものに見えたがどうだろうか。それからこれはアメリカ人が見るのと我々が見るのでは違う印象を与えると思うが、この点についてはどうだろうか。そもそも、史実に基づいた創作(ファクションという言い方はそもそも適切か)に対する解釈の仕方とは。

シールズの訓練場面は昔見た動画を思い出して少々元気が出た。